時は帝政ロシア後期。場所は、華やかな宮廷生活とはうらはらに庶民が混沌と暮らすサンクトペテルスブルグ。そこでは、農奴制度や貧困に抗議し、先鋭な社会主義運動に身を投じる人も多くいました。そんな世相を見事に描き出したこの作品。19世紀後半のロシアの世情を知り、そこで苦しむ一人の若者を通して我々に語りかける命や愛についての葛藤をわかりやすい英語で味わえます。
プーシキンやトルストイ、ツルゲーネフとともに、19世紀のロシアを代表する作家。モスクワの貧民救済病院の医師の次男として生まれ、15歳までモスクワで暮らす。工兵学校生時代と作家時代を送ったサンクトペテルスブルグは、物語の舞台として数々の作品に登場する。1846年、『貧しき人々』でデビューした当時は「ゴーゴリの再来」と呼ばれた。1849年、社会主義運動のサークルに所属していた件で捕まり、シベリアの牢獄へと送られる(『死の家の記録』に詳しい)。以後、俗に五大長編と呼ばれる小説群『罪と罰』、『白痴』、『悪霊』、『未成年』、『カラマーゾフの兄弟』を書き上げた。