清教徒が移住してきてまだ数十年しか経たないボストンで、町を揺るがす大事件が起きた。ある女性が夫のある身でありながら、父親の分からない子供を生んだのだ。町の人々はこの女性に、姦通を犯した印として、緋色の布で作った adultery (姦通) の頭文字Aを生涯、胸に付けさせることにした。女性は相手の男性の名前を決して明かさず、ひとり罪を背負っていく。戒律の厳しい清教徒の社会で、女性はどのように生きていくのか。近代アメリカ文学史を飾るナサニエル・ホーソンの傑作。
日本語による登場人物の紹介や時代背景の解説も含まれています。
この悲恋物語を通して、読者は清教徒が上陸してきて間もないアメリカへといざなわれます。夫を裏切り、他人の子を宿した主人公ヘスター・プリンは、キリスト教の厳しい掟によって裁かれ、贖罪のために胸に赤いAの文字をつけることを命じられました。しかし、その子の父親は、開拓者が入植して間もないボストンの人々を導く牧師だったのです。
ー ラダーの扉「緋文字とアメリカ」より
アメリカの小説家。マサチューセッツ州セイラム生まれ。4歳で父が亡くなり、母方の実家で育つ。大学卒業後もセイラムに住み小説を書くが、結婚後は生活のために税関に勤める。1850年に発表した「緋文字」の成功後は、「七破風の館」「ブライズデイル・ロマンス」などの長編を書いた。その作品では、植民地におけるピューリタニズムの影響が多く描かれている。