対訳ニッポン双書は、IBCの英語学習書の中でも人気のシリーズのひとつです。2007年5月に創刊されてから4年間で19タイトルを出版しました。
文字通り、英語と日本語が対訳になっていて、いくつかの例外はありますが、通常日本語が左頁、英語が右頁になっています。つくり方としては、日本語の著作に翻訳者が英語をつける場合と、反対に英語の著作を日本語に翻訳する場合があります。時々、どちらも一人で書かれる方もいらっしゃいますが、やはり作業としては、得意な方で執筆してからもう一方に訳すようです。
ところで、これが奇妙なことになっているのが、対訳『日本昔ばなし』です。
『日本昔話』は、まずラダーシリーズとして英語で出版されました。昔ばなしというものは、その性格からひとつの定本があるというわけではなく、伝承のされ方や伝わる地方によっていろいろなバリエーションがあり、また読者層によっても言葉遣いが違っていたりシチュエーションが違っていたりしますね。一方でラダーシリーズは英語のリーダーで、使用する語彙や文法を制限することで易しく読めるようにつくっていますから、ラダーシリーズの『日本昔話』も、意訳したり、難しい言葉は簡単な単語に置き換えたりして、英語にしたものです。(これを訳したというべきか執筆したというべきか、私はわかりません)
そして、今回対訳シリーズに入れるということで、「元の英語」を日本語に翻訳するという作業が必要になりました。日本人なら誰もがよく知っている昔ばなしの数々ですが、やはり対訳となるとおざなりにはできません。意訳ではなく、正確にその単語や構文を翻訳しなくてはいけません。こうして出来上がったのが対訳『日本昔ばなし』です。
英語が先で日本語があとになった『日本昔ばなし』。「著者が英語で書き、翻訳者が日本語にした」というべきか。それとも英語も日本語も翻訳なのか。すでに出版されたいま、私はまだ悩んでいます。

